様々なコスプレ関連の新企画を打ち出していったTGS2010だったが…
2008年秋のリーマンショックから始まる世界恐慌により、急転直下、苦境に立たされた東京ゲームショウ=TGS。 そこで起こった迷走、葛藤、試行錯誤…。 どんな企業でもそうですが、不景気になるとまず切るのが広告や宣伝に使う予算です。 東京ゲームショウを始め、世の見本市ビジネスが転換を迫られる時期になりました。数値でザッと見てみると…
2008: 出展社数209/出展小間数1768/入場者数19万人 2009: 出展社数180/出展小間数1367/入場者数18万人 2010: 出展社数194/出展小間数1458/入場者数20万人 2011: 出展社数193/出展小間数1250/入場者数22万人 2012: 出展社数209/出展小間数1609/入場者数22万人 2013: 出展社数352/出展小間数1539/入場者数27万人 2014: 出展社数421/出展小間数1609/入場者数25万人
…数字が並んでてイヤになった人はこの辺は流し読んでください。 本格的な不況突入した2009年以降、TGS出展小間数が一気に2割減。 2012年頃から回復傾向に入りますが、出展社数の増加に対して小間数(出展企業に対して場所代を課す、見本市としての重要な収入源)が伸びないのは、出展はするけど小さなブースしか取らない企業が多いという事です。 出展社数が過去最大になった2014年も、まだ小間数はリーマンショック前の水準まで回復していません。 なのに入場者数は上がり続けているのは…一つの面白い傾向だと思います。ここに、TGSの新たな形があります。つまりゲームの見本市から、文字通り“ショウ”への転換…?
■変わるゲームの広告戦略 さて、2011年春に発売された「エルシャダイ」の大ブーム、覚えている方も多いのではないでしょうか? 「そんな装備で大丈夫か?」が2010年度のネット流行語大賞を獲得したように、実はこのゲーム、最大のブーム期は発売前でした。リアルなCGで描かれたマッチョメンによる珍妙なやりとりのPVがネットで話題になり、様々なMADやパロディイラストが作られ、ゲームをよく知らない層にまで認知度が拡大しました。 それまでのゲーム宣伝の常とう手段といえば、いかにゲーム雑誌に大きな広告を載せるか、記事として取り上げてもらうか、TGSや他イベントでPVを流したり試遊台を置いてユーザーの興味を引くか…でしたが、リーマンショックを機に…と言うかそれ以前から徐々に変わりつつあったのが、決定的になっていたのでした。
もう、新作ゲームのPVを見てもらうならばYOUTUBEやニコニコ動画などを使えば良く、体験版をプレイしてもらうならハードによってはネット配信という手段もあります。 大きな予算をかけてTGSに出展して、大きなブースで大きなビジョンからPVを流したり、体験版のCD-ROMを大量に配布する時代じゃ、なくなっていたんですね。 中小メーカーは出展を見送り、大手メーカーも規模を縮小します。
じゃあ、いかに会場に足を運んでもらうのか?「会場に行きたい!」と思ってもらうには、ゲームの最新情報や試遊だけでなく、どうすれば良いのか? TGSと、メーカー各社の模索が始まります。
TGS会場内では出展減により空いたスペースを活用して、2010〜11年には格闘ゲーム大会「闘劇」を会場内で併催しました。 また、TGSメインステージでは2010年から、それまでゲスト扱いだったりバンダイナムコブースで行われていたアイドルマスター声優のミニライブをボリュームアップさせて開催、その後メインステージでのアイマスライブはサプライズ発表と併せてほぼ毎年恒例となり、全国から集まったアイマスプロデューサーさん達が年に一度、ラブライブへと揺れる邪心を戒め合い、鉄の結束を誓い合う巡礼地となります。半分ウソ。 (この最初の「765プロダクション2010年度決起集会」はサプライズとして発表されたアイマス2での仕様変更や男性アイドルグループJupiterの存在がファンをドン引きさせた事で“9・18事件”として語り継がれるのですが…)
出展メーカーのブースも、より趣向を凝らしていきます。 2012年に初出展したブシロードではブースにプロレスのリングを設置し、子会社の新日本プロレス選手らの試合を行うなど、パッと見ではゲームに関係無いようなブースを作って話題を生みます。 セガに至っては、「龍が如く」(※シェンムーの亡霊(誤字訂正))にかこつけて毎年ブースの一角にキャバ嬢、ついでにゾンビという、もう何の会社かも分からなくなりました。それ以外での主力コンテンツが初音ミクという外様っぷりでしたが、2011年、ねんどろいどを模した(つもりの)着ぐるみを投入…この微妙に似てないミクが後に、「ミクダヨー」の愛称で伝説を築くのは、もう少し先の話です。 実にTGS出展から15年、ドリームキャスト撤退から7年にして、「セガに時代が追いついた」のか、「セガが時代に追いついた」のかは、後世の歴史家の研究を待ちます。
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