普通のコスプレイヤーから見ると、TVや週刊誌に登場する“有名コスプレイヤー”は、聞いた事も無い名前が多い。 内/外側の価値観の差が表出する瞬間である。
[駄犬の切り貼り実験ノート:第21回]
「最近のコスプレは、顔と露出でしか評価されなくなってしまったのではないか?」ってな声を頻繁に聞くようになりました。 局地的な議論になったり、結構な数の同意が集まったりしているみたいですね。 非常に興味深い話題です。
そういえば、最近ではどこかのコスプレサイトと組んだ、美容皮膚科主催のコスプレイヤーコンテスト(コスプレコンテスト、ではなく)なんてのもあるらしいですからね!
あ、ンな意見は聞いた事が無ぇよって人もいるでしょうから、それはそれ。見てる世界が各個で違うのは当然なので。
さて、「割と昔からそーだったよ」と、私なんぞは思うのですが。
そもそも論ですが、コスプレへの評価ってどこに存在するでしょう。 考えてみると誰だって、自分や一緒に活動する仲間のコスプレが一番でしょ? 基本的には、壮大な自己満足や、仲間内での評価でしかないですよね。 後は、たまにゲーム雑誌やコスプレ雑誌に載ったらスゲー!くらいでしょうか。 あるいは同じジャンル内では少々有名だったり憧れの目で見られている人でも、活動ジャンルが異なると、まったく知られてませんから。
コスプレを“評価”しようとしたのは、常に、外側のメディアによるものだった気がします。 でも、じゃあ昔だったら、衣装のクオリティでコスプレが評価されていたのでしょうか? 違います。 ハッキリ言って、昔からコスプレに対する“外”からの評価なんて、顔がカワイイか恰好がエロいかどっちかだった気がします。
基礎講座:外と内の需要の差 [衣裳の出来が良い/キャラの雰囲気に似てる] → 原作ファンや濃ゆいオタクにしか伝わらない価値。狭くて深い“内”側の需要。 [顔がカワイイ/恰好がエロい] → 原作を知らない人にも伝わる価値。広くて浅い“外”側の需要。こっちの方が絶対的に大きい。
必ずしも二元論でパッキリ分かれる訳ではなく、中間層だって存在するのですが、ここでは分かりやすく、内/外という表現をします。 内側の需要も拡大しつつありますが、でも、外側の需要の方がどうしても大きいんですね。
パロディ同人誌だって、原作を知らない人でも、絵柄が好みとかエロだったら買っていく人は沢山いますから。同じです。
歴史的に見てみると、80年代に恐らく初めてアニメ雑誌のカラーページで取り上げられたコスプレイヤーって、漫画家の一本木蛮先生による「うる星やつら」ラムちゃんコスだと思うのですが、やはり虎柄ビキニ水着のインパクトだと思います。 90年代、生まれては消えた初期コスプレ雑誌が、素人エロ雑誌のイメージで作られていた事はこの連載の第一回「コスモードの栄光と挫折」で語った通り。 同時期、深夜番組「トゥナイト2」は積極的にコスプレ特集を組みましたが、やはり露出の多い格闘ゲームキャラのコスプレに対して、原作なんて全く知らないであろう石川次郎キャスターや山本晋也カントクが「セクシーですねぇ〜」って、中身の無いコメントするのがお約束でした。
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テレビ朝日の深夜番組「トゥナイト2」は、時事問題から流行のスポットや食べ物、そして名物・山本晋也カントクの風俗レポートまで、節操無く何でも取り上げる、夜のワイドショー的な番組であった。 コスプレをバッシングや嘲笑ではなく扱った番組は(エロ要素優先とはいえ)、90年代中盤頃はまだ珍しかったのである。 |
昔なんてコスプレ=風俗用語のイメージでしたから、今よりもっと露骨にエロ評価でしか見られてなかった訳で、さらに有名になりたかった人たちは脱ぐしか道がなかったので、00年代の2chには、お気に入りのレイヤーがAVに出ないよう祈るスレ……なんてのもあった位です。 もっとも、祈りが通じるとは限りませんでしたが……
それに比べたらここ数年、色んなメディアで色んなコスプレが、エロ以外でも取り上げられる傾向ですから、むしろ広がったと見る事もできます。 では何故、「最近は顔と露出で評価されている」ように見えてしまうのか、面白いので今回はその辺を考えてみます。
さて、毎度ながら「何がどうしてこうなった」って話はしますが、別に何かを断罪するような意図も無いですから。 読んで何か考えるきっかけになれれば。 5ページ9000文字という長さをお付き合いいただける方は読んでいただきたく候。
キーワードは、拡大・多様化・情報過多、の3つ 1. 拡大により、最初から顔や露出しか求めてないメディアが、メジャー化してきたコスプレの世界に接する機会が増えた。 2.多様化により、 コスプレが必ずしもファン活動ではなく、有名になりたい素人が自己アピールするための芸能活動の一環になっている。 3. 最大の理由としてSNSの普及が情報過多を起こし、自分とは違うスタイルで評価を集めたり目立ったりしてる人の活動が、視界に入りやすくなっている。
→コスプレを取り上げるメディアの増加
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